探し人はいずこ(結)

翌朝、酒場に向かうと、少年はもう待っていた。

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「パパチチさん、もうすぐ出港?」
「まあね。おじ上とは挨拶してきたかい?」

「うん。昨日おじ上からいっぱいお話聞けたし。お手紙を書いてくれるって約束もしたからね
「……できるなら 僕もおじ上と一緒にこの国を巡ってみたいんだけど
「そんなこと 今の僕にはできない。きっと おじ上に迷惑をかけてしまうから……
「僕 早く大きくなりたいな。昨日 おじ上が言ってた「僕にしかできないこと」が今はまだなにかは分からないけど
「僕もおじ上みたいに強くて優しくて 立派な人になれたら──」

少年は、空を見上げたまま、自分自身に言い聞かせるように、話し続けた。
自分の未来を、その運命を、自らの言霊によって確たるものに定めようとするかのように。

「──さあ ストックホルムに帰ろう。向こうについたら 港の前でお別れしようね」

ああ、了解だ。





ストックホルムまでの航路は順調だった。

航海の間、少年は、グスタフ2世アドルフから聞いた話を、一生懸命、話してくれた。

幸せそうだった。

きっと、一生の思い出になるのだろう。


そして、あっという間に少年の故郷へと帰港し、別れの時が来る。

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「パパチチさん、ここまで一緒にいてくれて、どうもありがとう」

少年が殊勝気に頭を下げる。

「あなたがいてくれたから、僕はおじ上に会えた。今回はここまでだけど、またいつか 一緒に旅を──

言いかけた少年が、通りのむこうから近づいてくる人影に気がついた。

「あっ あのときの占い師さん」

お?
エイリアス?
まるで正確にここに来る時間がわかっていたかのような登場っぷりだ。

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神秘的な占い師、エイリアスは、みなに優雅なお辞儀を披露してから、少年に語りかける。

「良いお顔になられましたね。望むものに指先が触れ、わずかな充足と 未来への意志を得た──そのようなお顔です」
「うん 「おじさん」に会えたんだ。占い師さんの言ってたとおり、リューベックの教会で「おじさん」を知っている人に会って……
「本当に ありがとう!」

「星の導きに耳を傾け、あなた自身が道を選んだ結果です」
「僕自身が選んだ結果?なんか うれしいな……」
「その気持ちを大事になさると良いでしょう

  やがて あなたの太陽は
  霧に覆われ 地に墜ちます
  太陽を失ったあなたは
  大いに思い乱れ 己を見失います

「そのとき あなたが、どのような未来を選び取るのか──すべては あなた次第です」

少年は、少し戸惑ったような顔をしたが、あえてエイリアスに意味を問いかけはしなかった。

「僕、もう帰らなくちゃ。さすがに従妹が心配しているだろうし。占い師さん、パパチチさん、本当にありがとう。
「ねえ、パパチチさん、もし僕が未来で困るようなことがあったら、またパパチチさんの力を借りてもいいかな?
「あなたみたい頼れる人がいるだけでも心強いからね」

「それじゃ また会う日まで 元気でね!」

少年はエイリアスに負けないぐらい優雅な挨拶を披露すると、王宮の方へと歩きだした。

おっと!

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「どうかしましたか?」
「いやなに、そういえば、最後まで、あいつの本名聞かなかったなあって」
「ああ、きっとまた会えますから。その時までのお楽しみということで」

エイリアスはくすりと笑みをもらして、また予言めいたことを話す。
彼女の場合、こういうセリフは、社交辞令じゃなくて本当のことみたいに聞こえるから、ちょっと怖い。

「さあ、お約束ですから、皆さまも一人ずつ占ってさしあげます。まずはシィアグウさんから、どうぞこちらへ」





それから、港近くの酒場の一角で、ひとりずつ、順番に話をした。
個人的な占いなので、話が聞こえない様に、離れて順番を待つ。

シィアグウの後がタカイドで、最後が自分の番だ。

タカイドと入れ替わって椅子に座るついでに、エイリアスに疑問に思ったことを先に聞いてみた。

「・・・だけど、さっきの予言。あの墜ちる太陽って、やっぱり、獅子心王のことですよね?」
「・・・・・・」
「今回の一連の流れ。何かの意味があったような気もするんですが・・・」

「・・・では、その件は、私の弟の話をきいてみてください」

「え?!」

いつの間にか自分の後ろに立っていたタカイドがおもむろに話し出す。

「非常に不思議な話なのでどこからどう話せばいいのか・・・・・・

ドイツで意気盛んな北方の軍ですが、やがて軍に復帰するボヘミア出身の傭兵軍団長との決戦になります。

決戦そのものは、北方軍の勝利で終わりますが、率いていた若き獅子王は戦死してしまいます。

その後、北方の王国は、王の娘が統治しますが、やがて彼女は退位して先王の甥が即位します。

そして、その新王は北方の王国をますます盛んにしていくわけですが、やはり戦地で命を落とすのです。

彼は、ドイツで死んだ先獅子王を幼少のころから非常に慕っていたのですが、結局、彼の王がドイツに出陣してからは会うことがなく、子供時代の思い出となるようなエピソードもあまりなかったため、酷く残念だった、と死に際でも周囲につぶやいていたそうです。

「ん?あれ?出陣後には会ってないって・・・・・。会ってきたじゃないか・・・・・」

さて、その北の国には、後にライバルとなる大陸側の大国があったのですが。

何十年も後で、そこの皇太子に嫁いできた読書好きの少女が、書庫でみつけたそのエピソードにかなり同情されたらしく。

なんとか、少年時代の彼に、肉親である先王との思い出を作ってあげたいと願ったそうです。

彼女は、自分の皇太子妃としての境遇や、親しい肉親と話をすることもできない環境にいましたから、その甥の少年時代を自分に重ね合わせたのかもしれません。

そんな彼女の想いが、時を超える奇跡を生んだ、というわけです。

「ん????」

「パパチチ。ロシアのゾフィーこと後のエカテリーナ2世は、獅子心王とボヘミアの傭兵司令官が対決した30年戦争の100年後の人物です」

????いや、だって、俺達、どっちにも会ってるじゃないの!リアルタイムに!」

「この世界は、そういう世界なんです。様々な想いが紡ぎあげた、現実とはちょっと違う世界。こうであったかもしれない、という想いが作り上げた世界」
「そして、あなたは、そんな世界を「自由」に往来できるキャラクターなんです」

えーー!!

メタ話とか、時空を超えてとか、歴史的に時間差がありすぎるエピソードのこととか、このまま、あいまいにしておくのかとおもったら、いきなりそういう設定をぶっちゃけてくるわけ?!

「まあ、事実ですし。この世界で歴史どおりの展開なんて無理ですし」

うわー、開き直ったよ。

それはそーだけれども。

大航海時代に、パナマ運河が開通している世界だけれども。



「・・・・・・ま、そういうことなら、それでいいか」
「さすがパパチチ、話が早い」

「つまり、違う時空の時間軸にいる少女ゾフィーが、敵国研究中にかわいそうな王のエピソードをみつけたから、同情して、彼の少年時代におじさんとの思い出作りをしてあげたいなーって、願った、ということだな」
「まあ、そうです」
「彼女にも、そういう乙女ちっくなところが残ってて安心したよ」
「そっちですか? さすが、少女好きの人妻好きですね」
「いや、違うって。それじゃ、倫理にもとる変態じゃないか。いい話で終わりそうなのに、困るよ」
「はあ」

「それにしても、タカイド、お前やっぱり、エイリアスの弟だったんだな~」
「いえ、違いますよ?」
「え?」
「さっきの自分の番の占いの時に、エイリアスから先に話をきいたので、ちょっとネタ合わせをしておいただけです」
「なにその茶番」

慌ててエイリアスをみると、くすくすと笑いをこらえている。

「なんですか、もう!神秘的な占い師のイメージを壊さないでください!」
「ごめんなさい、パパチチさん。でも、悠久の時と共に存在していくためには、ユーモアは欠かせません。真面目なだけでは倦怠を招くのみですから」

「むー。わかりました、もういいです。ところで、私の分のうらないは、どんな感じですか」

「今回の件でボヘミアの地との縁が増えました。そしてそれは、いずれ銃使いの彼女が避けてきた過去と向き合う機会を作るでしょう」
「ふむ?」
「その時、彼女が選択する道によっては、あなたとタカイドの運命にも大きな影響を与えるでしょう」
「ふーむ。その時に、何かできることがあるかな?」
「結末はまだ未確定です」

何をどうしたらいいかはよくわからんが。
そういうエピソードがやってくるんだろうな。この先。

「なにかこう、具体的にこうしたらいい、ってのないですかね。前回の羽飾りみたいな」
「・・・そうですね。帯の締め方を復習しておくと良いですよ。日本の」
「ん?それって大事???やっぱり命にかかわるかな?」

それには答えず、くすくすっとエイリアスは笑って、立ち上がった。

「それではまた、お会いしましょう。冒険者のみなさん」

いつも感心するのだが、エイリアスは、まったく体重がないかのような軽い身のこなしである。
彼女を見送りながら、ようやくほっと一息ついた。


さーてさて。
なんだか、最後に字ばっかりになっちゃったな。ま、いろいろぶっちゃけられてスッキリもしたし。

とりあえず、我々も、南の方にもどろうかねえ。
寒いところで寒い話が続いたけど、まだ夏なんだし!

夏といえば、祭だよ。
それが終わらないと、夏もこの章も、終われないよ!

そうなんだよねえ。

ゾフィーとグスタフって、さ、時間差ありすぎじゃん。後から気がついた。

まあ、でもそういうゲームだからいっか、とσ(^_^;)

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