探し人はいずこ(3)

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「おじさん、いないね」
「がっかりするのは まだ早いぜ。さっき聞いた情報ではそろそろ来るはずだって──」

そこへ、軍服の赤毛の男が入ってくる。

「──おっ? お前は……」
「あっ…… おじ上!!よかった! やっと会えた!!」

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「お前 なんでこんなところに?・・・・・・しかも まあ大層なご仁と一緒に……」

赤毛の男は、一目見て、少年の側に立っているのがヴァレンシュタイン当人だと気がついたようだ。

「いやあ そういう成り行きでしてね」

ヴァレンシュタインもとぼけてすまし顔だ。

「神聖ローマ帝国の元皇帝軍総司令官殿が成り行きで子供のお世話とは──おたく 罷免されて相当暇なんだな」
「あなたこそ 攻め込んできたばかりで激戦の最中でしょうに お忍び観光たぁいいご身分でいらっしゃる:

──スウェーデン王グスタフ2世アドルフ様


あー。やっぱりね。そんな感じじゃないかと思ったよ。
むしろ引っ張り過ぎだろ、この展開。

「……ヴァレンシュタインさんはやっぱり知っていたんだね、「おじさん」のこと」
「まあ 皇帝軍総司令官だったからな。ご近所の王様のことくらい知ってるさ」

「俺に会える保証もないのに……敵地に乗り込んでくるとはなんつう無鉄砲だよ……」

赤髪の男、グスタフ2世アドルフは、そこから少年相手に軽く説教を始めた。

まあ、内容的には、「こうであるべし」という帝王学的なところを語っているのだが、どうもヴァレンシュタインを前にしての照れ隠しというか、恰好つけのようなところが見え隠れしている。

「──ああ そうだ、今夜は一緒に宿に泊まろう。で お前が眠るまで俺がここで見聞きした話をしてやる。
「どうだ? 悪くないだろ?」

ほら、最後はこんな風に締めてしまうものだから、実は嬉しかったし誉めてやりたいという気持ちがバレバレだ。

一緒に泊ってお話してあげるなんて、それ、ご褒美だから。

「……本当に!?」

少年は喜んで飛びあがらんばかりだな。

「そのかわり 明日の朝にはそこの航海者に連れて帰ってもらうんだぞ」
「う…… 分かりました」
「決まりだな。じゃ 先に宿に行ってな。俺もすぐに行くからよ。場所は酒場の二階だ道は分かるか?」
「大丈夫です!待ってますね!」

・・・・・・ん?あれあれ?
勝手になんか決められた?

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「……ふう 驚いたぜ。子供ってのはなにをしでかすか分からねぇもんだな」

「ただの我侭や無鉄砲かと思いきや、協力者を手配して目的を達するだけの周到さも備えている──なかなか将来が楽しみな子供じゃないですか」

殊勝気に少年を誉めてるけど、ヴァレンシュタイン、噴き出すのこらえてるから。
グスタフ2世アドルフの親ばか(おじバカ?)っぷりがよっぽどおもしろかったらしい。

「……元皇帝軍総司令官さんよ」

空気を変えようとするかのように、突然、グスタフ2世アドルフが口調を変えてきた。

「なんですかね」
「おたくはどこまで狙っていた」
「どこまで というのは?」
「職を解かれたとはいえ、暇を持て余すこともなく情報収集に抜かりないおたくが。
「わざわざうちの甥っ子をここまで連れてきた意図はなんだって聞いてるんだよ」

「いたいけな子供が わざわざ海を渡って大好きなヤツに会いたいという、純粋な想いに応えたまでですよ」
「それに加えて 少しだけあなたに会ってみたかったという、個人的な思惑もありましてね」

ヴァレンシュタインは、鋭い王の問いかけを柔らかくいなすように、ゆっくりと話し出す。

自分が自由の身で、自由に動ける間に、破竹の進撃を続けるスウェーデン軍と若き英雄を客観的に見知っておきたかったのだと。

「・・・・・・なるほどね。だが 俺と仲良くなりたいって腹づもりでもなさそうだな。
「元皇帝軍総司令官さんはなにかを企んでやがるってわけだ」

「企みは否定しませんが「元」「元」と連呼するのはやめてもらえませんかね」
「へいへい。「元」のままでいる気はないってことか。……ははっ こいつは面白ぇ」
「まあ、万が一そんなことになりましたら、噂に聞く獅子王のお手並みとやら直に拝見しましょう」
「余裕かましやがって……あとで吠え面かくんじゃねぇぞ」
「その言葉そのままあなたにお返ししますよ」

うへえ、やめて、しがない一介の航海者の前で、英雄同士が火花を散らさないで!!!
飛び火したらやけどしちゃうし、そんな因縁に巻き込まないでくれい!!!

一触触発かとおもいきや、ヴァレンシュタインは軽やかに王に敬礼をすると、その場の空気を一変して帰り支度を始めた。

「さぁて 坊主は無事送り届けたし。俺はそろそろ退散するか。
「パパチチ、俺はここでお別れだ。坊主の帰り道のお供は任せたぜ」

いや、待って待って。それはまだ了解していないのだが。

・・・お前さんの今回の黒幕にもよろしくな。

ヴァレンシュタインは、そんな風に自分にだけ聞こえるようにつぶやくと、大股で教会の外へと歩いていった。

「ふうむ、しかし獅子心王め、ちょっと目が悪いみたいだな。実際に会ってみないと分からないもんだな」

そんな独り言を残しつつ。


いや、黒幕なんていねーし。
・・・・・・。
・・・いない・・・・・・よな?

あ、そうそう。
王様に言っておかないと。

「えーっと、自分もここでお暇しようと思ってたんですけが」

丁重に、グスタフ2世アドルフに挨拶をする。

「そう言うなよ。あんたのような航海者にとっちゃここからストックホルムなんてあっという間だろ?
「パパチチっていったか──うちの甥っ子が世話になったな。あんたの名前は覚えておくぜ
「あいつには 明日、酒場の前であんたを待つように言っておく
「無事に送り届けてやってくれよ」

ぐぬぬ・・・(ーー;)

名前を覚えておくって・・・・・・。
それって、一見良さそうな言葉だけど、断ったら、忘れんぞ!って脅しの意味もあるんだよ??

やれやれ、このまま南下できるかと思ったら、また北に逆戻りか。
まあ、仕方ない。最後まで面倒見よう。
エイリアスの件もあるし。

しかたない、宿をとりにいこう


(この件、次で終わりですね)
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