探し人はいずこ(2)

リューベックって、なんだか寂しい街だよねえ。

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んー、そうかもね。
まあ、自分は鋳造上げとかで通ってた時は修業に忙しくて、街並みを良くみたりはしなかったからな。

さて、ではエイリアスの占いに従って、教会に行ってみるか。





「……誰もいないねどうしよう?」

少年が、心細げに、そして少しがっかりしたようにつぶやいた。

「まあ、日時までは教えてくれなかったしなあ」

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その時、教会の入り口から入ってくる人影が見えた。
なんだか、傭兵風の男だ。

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「お おう…… なんだよ。二人してじろじろ見やがって……言いたいことがあるなら言ってくれよ」

はっと我に返った少年が問いかけた」

「急にごめんなさい、あなたのお名前は?」
「俺はヴァレンシュタイン。傭兵稼業を営んでたんだが この間雇い主からお暇をもらっちまってよ。故郷に帰りがてら ブラブラと寄り道していたところだ。

ほほーっ。
ヴァレンシュタインとは大物がきたな~。
ローマのコロッセウムで時々みかけるけど。
まあ、むこうからしたら、こちらは多数の内の一人だろうから、顔は覚えていないだろう。

タカイドによると、彼はボヘミア出身の傭兵隊長で、三十年戦争であっというまに神聖ローマ帝国軍のトップに上り詰めた戦争屋。
ただ、新しい略奪によらない徴税による軍団の維持を制度化するなど、軍政にも長じているから、ただの戦バカでもないらしいとか。
先年、ここ、リューベックでの和約で、ドイツ覇権の頂点に立ったのもつかの間、政治状況が流動して神聖ローマ皇帝のフェルディナント2世に罷免されたはず、とのこと。


「で 坊主はなんだ? 俺の顔を見て一瞬がっかりしただろ?

少年はちょっとバツが悪そうな顔をした。

「人を探してるんだ。ここに来れば会えるって言われてきたんだけど──」
「そこに俺が来たってわけか。よし、ちょっと事情を話してみな。そこの航海者さんも、いいよな?」

ヴァレンシュタイン氏が、既に軍から離れているのなら、まあ、いいか。
どこかに所属しているとややこしくなりそうだからな。





「なるほどね……
「──それにしても 坊主のその訛り北の国の出身だな? スウェーデンか ノルウェーか……」

(ほほー、さすが、ヴァレンシュタイン氏、鋭いね)

「そんな遠くの坊主が航海者まで雇ってわざわざここまで来るなんてよ……」

ヴァレンシュタインは面白そうにニヤリとする。

「もしかして 坊主が会いたいのは最近ドイツの北に攻め込んで戦で名を上げているヤツじゃねぇか?」
「!!」
「見た目は そうだな……
    赤っぽい髪に茶色の瞳
    自信たっぷりな面構え ってところか?」

「あ あの……」

「ははは 当たったみてぇだな。顔色変わりすぎだぜ 坊主。
「そんなに素直な反応してると 悪党に騙されちまうぞ?」

(それは、同感だ) 

「さて、その「おじさん」俺ならどこに会えるか知ってるが、どうする?ついてくるか?」
「「おじさん」のことを知ってるの?」
「ああ 俺の予想どおりのヤツならいろいろと知っているぜ」
「もしかして、「おじさん」の敵なの?」
「いや、まあ 俺は「おじさん」の敵じゃない──少なくとも 今はな」

信じる信じないは坊主に任せるぜ、と、ヴァレンシュタインは念をおす。

少年は少し悩んだ様子だったが、最終的にヴァレンシュタインを信じることに決めた。
いや、「おじさん」に会いたいがために、信じたい、と思ったのだろう。

「万が一 別人でもあんまりがっかりしてくれるな……俺が傷つくからよ」
「分かった!それじゃ パパチチさん、一緒に行こう!僕は先に船に戻って 準備してるね」

あれれ!

まだ一緒行く前提なのか
てっきり、リューベックでヴァレンシュタインに会うまでが役割かと思っていたぞ!

救いを求めるようにヴァレンシュタインを振り向いたが、やれやれ、といったジェスチャーでウィンクされてしまった。

「お前さんも巻き込まれた口かい?
「ま、ガキが一人で海を越えて異国を旅してるんだ放っておくほうが寝覚めが悪いぜ。
「ここはひとつ、我々大人が協力して、坊主の願いをかなえてやろうや」

ぐぬぬ・・・(ーー;)

「ところで……おめぇさんは 気づいているのかい?あの坊主が探しているのが誰なのか
「そして あの坊主自身が誰なのか──

「・・・・・・はーて?」

まあ、うすうす気がついてはいるが。
何かの鎌をかけられるのもいやなので、とぼけておいた。

「そうかい、それなら知らないままでもいいさ。それじゃ ハンブルクまで行こう」
「ハンブルク?」
「ああ。坊主の「おじさん」は、そこの教会に良く通っているらしいからな」


・・・・・・しかし、と、ヴァレンシュタインは、歩きながらこちらを見てつぶやいた。

おまえさんは本当に一介の航海者にしか見えないわけだが。
そもそも、一介の航海者がなんで、あの坊主の付き添いなのかね。
まあ、そのおかげで、うまくカモフラージュはできているんだろうが。
おじさんとやらには内緒みたいだし、ドイツ諸侯の陰謀ってわけでもなさそうだし。

・・・じゃ、誰があんたをあの少年の世話をするように手引きしたんだろうな?


「偶然ですよ、偶然。こちとら貧乏航海者ですからね。仕事であれば何でもしっかり誠実に果たしますよ」

「ふむ、まあ、今の俺には、どうでもいいがね」

元、神聖ローマ帝国総司令官は、ニヤリと笑って、港へ歩いていった。


(さらに続きます)
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